欧 月 日 記(あとがきに代えて)



 平成5年4月20日より、勤続10年のリフレッシュ休暇を利用して欧州を旅行してきた。
 ドイツより古城街道、メルヘン街道を経てスイスへ、そしてTGVに乗ってパリへと、11日間の旅である。
 わたしにとっては始めての海外旅行、そのなかで感じたものを「欧州日記」として記す。


第一日

 成田よりエールフランス機でパリへ、さらに飛行機を乗り継いでドイツはフランクフルトに到着、ここからバスでハイデルベルグのホテルに移動。着いたのは深夜。当然、この日に観光はなし。

     飛 び 立 ち て 長 駆

        し ば し 羽 を 休 む

           欧 州 の 一 夜



第二日

 ライン河下り。パンフレットで城の呼び名が2種類ある事を知った。
 なお、ヨーロッパは異常気象らしく真夏の陽気で日本より10度は高く、天候にも恵まれた。この天気は旅行中続き、雨らしい雨に合う事がなかった。

     時の流れの中に古城が在る

       人の欲望のままその姿を変える

          崩れ落ちた城壁は 何も語らず



第三日

 ハイデルベルグを後に古城街道をローテンブルグへ。途中、シュヴェービッヒハルに立ち寄る。ローテンブルグもシュヴェービッヒハルも城壁に囲まれた中世の街である。しかし、この『街』こそが、日本の城に最も近い『城』であると痛感した。

     堅牢な堅牢な堅牢な

        城壁に抱かれた街

           人の想いさえ閉ざさずにおれようか?



第四日

 ミュンヘン。「オリンピックとビールの街」という認識が崩れさった。ニンフェンブルク宮殿の庭園はフランス式の広大なものである。後日のベルサイユ宮殿もそうだが、フランス庭園のスケールは実物を見るしか理解する事はできないだろう。
 追記ヌ 真っ白な桜並木は見物だった。
 追記ネ 白ビールというものを飲んだ。夏の暑い時期に飲まれるものだけに爽快な飲み心地である。
     また、季節限定のボックビール(黒)も旨かった。

     広 大 な 空

        広 大 な 庭 園

           石 像 に 欲 望 を 刻 む



第五日

 ドイツより一端フランスを経てリヒテンシュタイン公国に立ち寄った後、宿泊地のスイスはファドーツまで4カ国を跨がっての大移動を行った。ここらへんはまだドイツ語圏なので、本屋にはペリーローダンも置いてあった。
 ファドーツはお祭りか、深夜まで人々の歌い声が響きわたっていた。

   4カ国を巡り湖畔の街へ辿り着いた

      夕闇に照らされ、河上に貯水塔が浮かび上がる

         アルプスの山々に囲まれ、人々のエネルギーが集まっている



第六日

 ユングフラウヨッホ観光の予定が強風の為、登山電車が運休し急遽ベルン観光に切り換えた。(旅行会社の好意により代替としてオプションのベルサイユ半日観光を無料にしてくれた)
 風の強さはふもとのグリンデルワルドではそれほど感じなかったが、山肌を落ちてくる滝が強風にあおられ途中で途切れるのを見るとその凄さを実感した。

     アルプスを吹き抜ける風は人間を拒む

      幾十年の月日をかけた鉄路さえ無力となる

       人間はこの威力を制すか、いや、制すべきか…



第七日

 数々の国際機関の集まるジュネーブへ。途中、レマン湖畔のシヨン城を見学。ここより先『城』はほとんど見えなくなる。
 なお、ここより先はフランス語圏。民衆の力がますます強まってくる。

     湖上に上がる大噴水

       人々の平和を望むパワーの証

          何事をも勝ち取る市民のチカラ



第八日

 フランスの新幹線TGVにてパリへ。
 ノートル・ダム寺院よりリュクサンブール庭園、コンコルド広場、シャンゼリゼ通りを経て凱旋門を左に見てシャイヨ宮からエッフェル塔を望むパリ半日観光の後、パリナイト・ツアーに参加、ムーランルージュ(赤い風車)でショーを楽しむ。シャンペンがおいしかった。

     回 る 回 る 紅 風 車

       夢 の 風 に 吹 か れ て

     回 る 回 る 紅 風 車

       酒 と 音 楽 絡 ま せ て

     今 日 の 糧 と 明 日 の 力

       夢 の 中 で 育 ん で …



第九日

 ベルサイユ宮殿半日観光。ルイ十四世はここからフランスを統治したという。民衆との距離を置く貴族の統治方法がヨーロッパの民主化成功の一因ではなかったのだろうか。
 ちなみにナポレオンもベルサイユ宮殿を利用したそうであるが、居心地が悪かったらしく、ほとんどをパリ市内で過ごしたそうだ。

     ルイ王、ナポレオン

       同じパリを愛し、世を治めるも

         その生きざまの何と異なる事か



第十日

 出発までの短い間であるが、ルーブル美術館を見学。その大きさに圧倒される。今秋には現在改修中のリシュリュー翼がオープンし、その面積を一・五倍にするはずである。
 モナリザとナポレオンの帯冠は見たがミロのビーナスを見つけられなかった。

     絵 は 語 る ?

       そ ん な こ と は な い

         人 そ れ ぞ れ に 感 じ れ ば 良 い



第十一日

 機中泊の後、成田へ。所要時間11時間と少々。
 成田は雨、気温もヨーロッパより10度は低い。
 JRで我が家へ……

     今 日 は 事 も な し



−了−


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