首付き小判



ここを掘れと犬の言う、
ここを掘れと猿の言う、
ここを掘れと雉の言う、
太郎さ鍬もて掘り返す。

掘って掘って掘って……

現れ以出たるは鉄の鉢、
太郎さこれを担ぎ上げ、
あまりの重さに腰砕け、
取り落としたる鉄の鉢。

コロコロボシャンと沼の中

あな悔しきと嘆くは太郎
そこへ現る沼の主。
右手に金の左手に銀の鉢を持ち、
ぬしが落としたるは何れの鉢や?
問われて太郎
「いえいえ落としたのは鉄の鉢」
これはこれは正直者と沼の主
金の鉢を太郎に被せ沼の中へと消えてゆく。

後に残されし太郎、
被らされた鉢を取ろうとしたものの、
とうあがいても外れない。
しかたがないと金の鉢、
被ったままで村へと帰る。

村に現れし金の鉢、
たちまち村人集まりて、
太郎の話もそこそこに、
金の鉢の奪い合い。
それでも太郎さの頭から、
金の鉢は離れない。

余りの騒ぎに何事と、
領主の姫が顔をだす。
かくかく然々話を聞いて、
ならばわらわがこうしてくれる。

手にした短刀スッパと抜かば、
金の鉢は高々と、
太郎の体を地面に残し、
離れた首を付けたまま飛び上がる。

そして出来たがこの小判。
さあさあさあ寄っといで。
まなこをひんむきよく見てごらん。
白くぼんやり見えるのが、

これが太郎の首付き小判。


…………おそまつ!!!!!!!


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