天界



     とろり とろける土色の肌
       カサカサと 崩れ落ちる四肢の骨
     黄土色の水溜まりに
       もがき 苦しむ人の群れが続く
     絶叫の迸り
       呻き声が絶ち籠める
     
     
     朱に染まった大地
       枯れ果てた草木に
         千切れ飛んだ肉片が絡み付く
     
     
     「水を……」 「光を……」
       盲た者達が躄り寄る
     
     
     触れるな! その汚らわしい指で私に触れるな
       汚れる 汚れてしまう
         私の白い靴が ズボンが シャツが
     触れるな! 汚い手で私に触れるな!
     
     
     泥水が跳ね飛び染みを作る
       一歩先は深い沼
         人々は互いに押し合い 泥の沼で浮き上がろうとしている
       一歩踏み外せば
         私も彼らと同じ 一塊の汚物と化してしまうのだろう
     
     
     踏み出せない 退けない
     
     
         今、一本の腕が 私の足首を掴んだ
 

−了−


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