最後の電送人間
  めぐみ VS 涼子



 あたしは池田めぐみ。
 数年前に世間を騒がせた「池田大輔」の養女です。あたしは亡き養父の代わりに養父を陥れた新木涼子こと荒木圭介に復讐するために日夜努力しています。
 
 と言うのは表向きの話し。
 実際にパパが失脚したのは不完全な『人体電送装置』を強引に実用化しようとしたためで、あたしがパパの愛人であったのも偽らない事実でした。
 荒木圭介はそのパパの行き過ぎに危機感を覚え、正義感に燃え立ち上がったに過ぎません。
 そんな中であたしとの事が暴露されるのも時間の問題でしかありませんでした。
 彼が女性ジャーナリスト:新木涼子として現れたのも、単なる内部告発ではパパに影響を与える事は出来ないと考えたためだったのでしょう。
 そんな中で彼には気の毒でしたが、事は彼の想定外の方向に進んでいました。
 彼は荒木圭介以外の人物になりすませば良かったのですが、彼自身の趣味か、彼は絶世の美女:新木涼子になってしまいました。それはマスコミを動かすには都合が良かったのですが。反面、彼女自身が表に出ざるを得なくなってしまったのです。
 そして、彼女が放置していった『人体電送装置』がありました。
 研究所を追われるその日、失意の池田大輔は『装置』を動かしてしまったのです。そこには荒木圭介が新木涼子に変身したプログラムがそのまま残されていました。そして、池田大輔は新木涼子と瓜二つの姿に変身してしまったのです。
 その場には、あたしもいました。
 でも、パパも涼子も気付いてはいませんでした。
 あたしが「小野めぐみ」でなく「新堂浩司」である事を…
 あたしの場合は彼らのような『変身』ではありません。あたしの『魂』のようなものがめぐみの身体に入り込んでいるのです。本来の「新堂浩司」の肉体は(『人体電送装置』を手に入れた後、データを分析して判った事ですが)、電子のコードとなって『人体電送装置』の中に取り込まれていたのです。
 あたしはデータの分析の過程で荒木圭介がどのような経緯を辿っていったか手に取るように見て採れました。彼の苦悩も、逡巡も、心が崩壊してゆく所も見えてしまったのです。
 もちろん、データの分析は誰にでもできるものではありません。
 あたしと、荒木と、あと2〜3の研究員が判るだけでした。
 そして、あたしが新堂浩司である事を知る者は一人としていないのです。
 
 
 
 パパはあたしの手で『女』にされ、『女』に目覚め、男達に抱かれながらその日を暮らしています。
 だれもその女が池田大輔であるとは思いもつかないでしょう。
 あたしはパパが失踪する前に養女となり、彼の財産を受け継ぎました。
 涼子はあたしの事を池田の愛人としてしか見ていません。
 その涼子も、パパを失脚させた後は目標を失ったせいか、女性ジャーナリストからただの『女』になっていました。しばらくはその美貌でタレント業をやっていましたが、マスコミ業界の荒波にあっと言う間に呑み込まれてしまいました。
 あたしはパパの干渉も、涼子の監視も気にする事がなくなり、思い切り『人体電送装置』の研究に打ち込む事が出来るようになったのです。
 今では『憑依』のメカニズムも解析できたし、『人体改造』の腕も涼子=荒木には負けません。
 荒木と同じように「新堂浩司」の肉体をテスト台に出来ましたが、それ以外にも人体実験が可能でした。
 
 あたしがパパから相続した財産はお金だけではありませんでした。彼には裏の世界との繋がりもあったのです。これもまた、あたしが相続する事になっていました。
 どこから聞きつけたか、定期的に被験者が供給されて来ました。
 あたしは見るからにヤクザな男達を改造しまくり、一定の成果が出た所で彼らを可愛らしい少女に変身させて送り返してやる。彼女達がその後どうなったか知る由もありませんが、この事であたしにまで追求の手が伸びて来る事はありませんでした。
 
 
 
 そして、あたしは新木涼子への復讐を実行する事にしました。
 あたしはパパと涼子をこの家に呼び寄せると同時に、自分自身に改造を加えました。
 先ずパパがやってきました。麻薬中毒らしく、黒服の男達に抱えられてやってきました。
 あたしは、復讐の主役であるパパを元の姿に戻してあげました。
「いやっ。元に戻して。」
 パパは女のように泣き叫んでいます。
 次ぎに涼子がやってきました。
 あたしは、『裏』の方から手に入れた薬で彼女の自由を奪います。
 ベッドの柱に両手足を括り付けました。
「良い格好ね、新木涼子さん。いえ、荒木先輩U」
 彼女の顔が唖然とするのを観るのは愉快でした。
「じゃあ、パパ。この変態男に復讐しておやりなさい。」
 大量の媚薬を与えられ、パパの股間ははち切れんばかりでした。
 薬のせいであたしの言いなりになっているパパはベッドの上に這い上がると、いきなり涼子の股間に突っ込んでいきます。
 が、恐怖に振るえる涼子の姿を期待していたあたしは以外なものを見せられました。
 彼女はマゾだったのです。
 恐怖に振るえるどころか、嬉々としてパパを迎え入れています。
 縛られて自由の利かない手足も悦びの糧としています。
「あん、あんU」
 と、悦びの声を聞かされ、あたしの股間も耐えきれなくなってきました。
 機械の様にピストン運動を続けるパパを押し退け、あたしは涼子の上に跨がりました。
 スカートの下には何も着けていないので、勢いを増した肉棒がスカートの生地を押し上げています。
「お嘗め!」
 あたしは涼子の目の前に自前のペニスを突き出した。
 涼子が舌先で亀頭を撫で上げると、あたしの女性自身も反応する。
 どくどくと愛液が滴り落ちる。
「パパ。あたしにも頂戴U」
 太い固まりがあたしの中に押し入ってくる。
 涼子がペニスを口に含むと、チュウチュウと音を発てて吸い込んでゆく。
 久しぶりに尿道を通過する白い塊を感じた。
「あ〜〜〜〜〜〜んU」
 あたしの女のコも絶頂に達する。
 パパの精液があたしの中を満たしていった…
 
 
 
 涼子もパパもあたしの肉奴隷でした。
 パパは再び可愛らしい女の子の姿に戻してあげました。
 涼子にはあたしと同じようにペニスをプレゼントしてあげました。
「お嬢様?」
 メイド服に身を包んだ涼子があたしのスカートの中から顔を上げた。
 彼女の真っ赤な唇に精液の残滓が付いています。
 あたしは退屈していました。
 抱いて、抱かれて、快楽を追求した先にあったのは『空虚』でした。
(全てを清算しよう。)
 あたしは涼子がカウチから転げ落ちたのも気にせずに『研究室』に向かいました。
 そこには『人体電送装置』が鎮座しています。
 あたしは新たなプログラムを装置に組み込みました。
 全ての作業を終え「新堂浩司」の肉体を呼び出すと、めぐみの身体から本来の自分の身体に戻った。
 気を失っているめぐみを制御装置の脇に横たえた。
 タイマが自動的に装置を動かしてゆく。
 装置の中でめぐみの身体にペニスを付けたままだった事を思い出した。
(涼子が何とかしてくれるだろう。)
 後の事は他人に任せよう。
 俺はタイマのカウントに意識を戻した。
 バシッ!!
 と音がして、装置が作動した。
 電送先は『∞』をセットしてある。
 どこに飛び出すかは装置任せだ。
 目の前がブラックアウトする。
 
 
 
 俺は土の上に立っていた。
 辺りは陽の光に照らされている。
 俺は瞼を上げた。
 
 さあ、新しいストーリーを始めよう。
 
 

−了−


    次を読む     INDEXに戻る