壁のように女の尻が並んでいた。そのどれもが淫蕩に洞穴から愛液を滴らせていた。
 
 
 
 俺はその尻の回廊の端に連れて来られた。その壁の一部となるように四つ這にさせられる。俺もまた彼女等と同じ女の肉体を与えられていた。重力に引かれるように俺の胸に造られた乳が垂れ下がる。脇腹を隣の女に押し付けられる。女の温もりが伝わってきた。隣の女を見たが、俺が隣に来たことにも気が付いていないようだ。恍惚とした表情で目は有らぬ方を向いている。
 カチャカチャと音がしたかと思うと俺の乳房に器具が装着された。隣の女の乳房にもぶら下がっている牛の搾乳機のようなもだ。チクリと針が乳首の付け根に刺さった。注射針のようでそこから何かが注入されてきた。途端に身体が暑くなる。腹の中で熱の塊が成長してゆく。その熱さに身体の中が汗をかき始める。汗は唯一の出口から身体の外に導かれる。俺は他の女達と同じに女陰から愛液を滴らせ始めていた。
 と、同時に胸に装着された機械が動きだす。薬のせいか、俺の乳首は敏感になっていた。機械に刺激されると得体の知れない快感に襲われる。股間に溢れる愛液が増える。そして乳房の中に変化が生じた。刺激が繰り返される度に何かが乳房の中を満たしてゆく。風船が膨らむように俺の胸を圧してくる。その圧力が限界に達したとき、俺の乳房の中身が機械の中に流れ出していった。機械の透明なパイプの中を白い液体が流れてゆく。それが俺の乳房から搾り取られた乳であると意識するよりも先に、俺は強烈な悦感に打ちのめされていた。
 
 
 時々、俺の意識が現実に戻ってくる。搾乳機は止めどなく流れ出す俺の乳を余す所なく吸い取ってゆく。そして俺の意識が戻ったのを感知してか、注射針の先から新たな薬液が投入されると俺は再び他の女達と同じに恍惚の世界に戻ってゆくのだ。
 
 
 何かが俺の腹の中で動いていた。男の荒い息遣いが聞こえる。そして男が呻くと、俺の腹の中に何かが放たれた。俺はようやく状況を把握した。女にされた俺の股間には男を受け入れる器官が存在する。たった今、それが本来の目的通りに使用されたのだ。俺の股間にペニスが突き立てられ、膣に精液が注ぎ込まれたのだ。俺は四つ這のまま、何の抵抗も出来ないで男を受け入れていた。いや抵抗どころか、その行為に快感さえ感じていた。俺は無意識のうちに男の動きに併せて膣壁を蠢かしていた。
 最後に放たれた精液はそのまま俺の膣の中に放置されていた。もちろん避妊などなにも考慮されていない。もし偶然にも子宮に辿り着いた精子があって俺の卵子と結合したならば、俺は妊娠することになる。いや、俺は妊娠したのだろう。その後、彼らは俺の乳の出が良くなったと言っていた。
 しばらくすると腹が膨れてくる。この中で俺の子が育っているのだ。腹と共に乳房も膨らみを増してゆく。乳の出が更に良くなる。俺の子が腹の中で動いている。俺は久々に身近に生命を感じていた。隣に連なる女達も生きて呼吸をしているが、ただそれだけの造乳機械である。子供は俺が語りかけると喜んで手足を動かすのだった。
 臨月を向かえた。俺は四つ這のまま出産した。しかし子供を産んだからといって、俺は母になれるわけではなかった。彼らは機械的に俺の腹の中から胎児を引きずり出した。俺が産みの苦しみに耐えている間にも、俺の子は彼らの手により、どこかに連れ去られてしまった。再び俺は独りとなった。淋しさに気が狂いそうになる。耳の奥で赤ん坊の泣き声が聞こえる。空耳であると判っているが、俺の肉体が勝手に反応する。空になった子宮が恋しさに打ち震え、乳房からは搾乳機の限界を越えて乳を吐き出すのだった。
 
 
 
 
 再び男がやってきた。俺はいつまでも独りではいたくなかった。男を…精子を呼び込むように俺は股間に蜜を滴らせ、腰を振ってフェロモンを撒き散らした。男がやってくる。ズボンを降ろし、股間を憤り勃たせて俺に近付いてくる。俺は肉付きの良い丸い尻を突き上げて男を待った。
 肉棒が俺の中に入ってきた。既に十分に濡れている秘洞はするりとそれを呑み込んでいた。しかし、いったん咬わえたモノを逃しはしない。ぐいと膣口を締めつけ、罠が閉じられる。そして膣壁を蠕動させると男は極上の快感に絡め取られる。しかし、即には射たせない。ぎりぎりの所で退かせては、再び寸前の所まで快感を揺すり上げる。これを繰り返すことで精液の濃度を高めてゆくのだ。
 俺の目的は単に男を射精させるだけではない。その精液で妊娠することが大事なのだ。だから、俺の胎に放たれる精液はできるだけ濃い方が良い。そして、男の精力が残っているうちに放たせるのだ。精液はできるだけ俺の奥まで届かせたい。俺は頃合いを見計らって男をフィニッシュに持っていく。男は呻き声をあげ、俺の胎に精を放った。十分な濃度をもった精液の中には元気な精子がいっぱいいる。その中のどれでも良いから俺の卵子と結び付いて欲しい。再び俺を妊娠させて、俺を孤独から解放してくれ…
 
 
 
 
     壁のように女の尻が並んでいた。その胸から採れる乳だけが人類の命を繋いでいた。
 
 
 
 

−了−


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