どうしても「彼」に告げる必要があった。
別に騙そうとしていた訳ではない。
ただ、コレが一番「自分らしい」と思っているから…
とうとう、バレンタインの当日になってしまった。
結局、手作りのチョコレートを可愛らしくラッピングして鞄に忍ばせている。
「放課後、用があるから部室で待ってて。」
今朝のうちにそう言っておいた。
「彼」の事だから、他の女の子からもいろいろ貰っているに違いない。
でも…
「本命」は僕の渡すチョコレートなのだ!!
終業のチャイムと同時に駆け出してゆく。
トイレに駆け込み制服を脱ぎ、用意しておいたもう一着の制服を着る。
ウィッグを被り、軽くお化粧する…
これが「僕」の、もっとも「自分らしい」姿…
僕はもうどこから見ても「女の子」だ♪
鞄の中からラッピングしたチョコレートを取り出し、部室に向かった。
「好きです♪ 受け取ってください♪」
「彼」にチョコレートを差し出した。
「開けても良い?」
「ハイ♪」
「彼」の手がラッピングを剥がしてゆく…
僕の作ったチョコレートが現れ…
パキッ!!
「彼」の歯がその端を齧りとっていた。
「ありがとう♪ 美味しいよ♪」
「嬉しい…」
「でも…」
「彼」が言葉を続ける…
「…できれば、本物の『女の子』から貰いたかったな♪」
(…そう…だよね。いくら女子の制服を着ていても…僕は…)
「ごめん…なさい…」
「謝る必要はないよ。」
「え?」
「君が『本物の女の子』になれば済む事なんだから♪」
「僕が『女の子』になる?」
「ちょっとした魔法を掛けてあげよう♪」
「彼」の顔が近付いてくる…
チュッ♪
甘いチョコレートの残り香が「僕」…否、「あたし」を包んでゆく…
「これで良いね♪」
「彼」の笑顔が眩しい…
キュン♪
あたしの心がときめいている。
そう…あたしは本物の『女の子』になっていた…
ー了ー